皆さん、こんにちは。群馬県邑楽郡大泉町の行政書士事務所 行政書士オフィスかわしまです。
こちらの記事では、「公正証書(こうせいしょうしょ)」について説明させて頂きます。「公正証書」という言葉は、離婚や遺産相続、お金の貸し借りなどの場面でよく耳にするかと思います。一言で言えば、「公的な専門家が作成する、極めて安全性の高い法的ドキュメント」です。自分たちで作る契約書(私文書)とは何が違うのか、なぜわざわざ費用を払ってまで作る必要があるのか。その仕組みや強力なメリット、具体的な作成手順まで、分かりやすく丁寧に解説します。
公正証書とは何か?(基本の仕組み)
公正証書は、「公証人(こうしょうにん)」という法律のプロフェッショナルが、当事者たちの合意内容を聞き取り、法律に違反しない形で作成する公文書です。
- 公証人とは?
-
公証役場に勤務している国家公務員のような立場の人です。その多くは、裁判官、検察官、弁護士など、長年日本の司法のトップで活躍してきたベテランの法律家たちです。そのため、公正証書に書かれた内容は「法的な間違いが一切ない」という強いお墨付きが得られます。
- 公正証書はどこで作るの?
-
全国にある「公証役場(こうしょうやくば)」というオフィスで作ります。都道府県ごとに何カ所か設置されており、基本的にはどこの公証役場を利用しても問題ありません(例えば、東京在住の人が神奈川の公証役場を使うことも可能です)。
- いつ作れるの?
-
公証役場は、平日のみ運営されております。通常のお役所と同じ理解で問題ありません。平日にお仕事等がある方は、対応するのが難しいかもしれません。そのような方は、当事務所で代行、サポートをさせて頂きますので、お気軽にご相談下さい。
公正証書はなぜ作るの? 公正証書の「3大メリット」
普通の契約書でも、お互いがサインして印鑑を押せば法的な効力は生まれます。しかし、それでもわざわざお金と時間をかけて公正証書にするのは、普通の契約書にはない「圧倒的な3つの強み」があるからです。
- ① 最強の武器:「強制執行(差し押さえ)」がすぐにできる
-
これが公正証書を作る最大の理由です。通常の契約書(私文書)の場合、もし相手が「お金を払わない」という約束破りをしたら、まずは裁判を起こして勝訴判決を勝ち取らなければ相手の財産(給料や預貯金口座)を差し押さえることができません。裁判には数ヶ月〜数年の時間と、高額な弁護士費用がかかります。
しかし、公正証書に「執行認諾(しっこうにんだく)文言」という、「約束を破ったら、裁判なしで財産を差し押さえられても文句はありません」という一筆を入れておくと、裁判を完全にスキップして、すぐに相手の給料や口座を差し押さえることができます。
注意!!!差し押さえの対象にできるのは、基本的には「お金(金銭の支払い)」に関する約束だけです。「子供に月1回会わせる」といった行動の約束については、この強制執行は使えません。
- ② 抜群の安心感:「偽造」や「言い逃れ」ができない
-
普通の契約書だと、後からトラブルになった時に相手が「こんなのサインしていない(筆跡が違う)」「騙されてハンコを押された」「そんな書類は無くした」と言い逃れをしようとすることがあります。
公正証書は、作成時に公証人が本人の身分証明書や実印を確認し、本人の目の前で内容を読み聞かせて、真意であるかを確認します。そのため、後から「そんなつもりじゃなかった」という言い訳は一切通用しません。また、原本は公証役場で原則20年間(内容によってはそれ以上)厳重に保管されるため、紛失や改ざん、破棄されるリスクがゼロになります。
- ③ 心理的なプレッシャー(抑止力)になる
-
「約束を破ったら、即座に給料が差し押さえられる」という事実と、公証役場という厳粛な場所で手続きをしたという経験は、債務者(お金を払う側)に強い心理的プレッシャーを与えます。「他の支払いを後回しにしても、この公正証書の支払いだけは絶対に守らなければ」という意識が働くため、結果的にトラブルそのものを未然に防ぐ効果が非常に高いのです。
どんなケースで公正証書を利用するの?
公正証書は、主に「将来的に金銭のトラブルが起きやすく、かつ絶対に約束を守らせたい場面」で活躍します。
- ケースA:離婚に伴う約束(養育費・慰謝料・財産分与)
-
公正証書が最も多く使われるケースの一つです。
- 子供の養育費を毎月×万円、成人するまで支払う
- 不貞行為の慰謝料として〇〇万円を分割で支払う
- 家の売却益(財産分与)を折半する
離婚時はお互いに「ちゃんと払う」と言っていても、数年経って相手が再婚したり、転職したりすると、養育費の支払いが滞るケースが後を絶ちません。シングルマザー・シングルファザーの生活を守るための命綱として、公正証書(執行認諾文言付き)の作成はほぼ必須と言えます。
- ケースB:お金の貸し借り(金銭消費貸借契約)
-
個人間、あるいは企業間でお金の貸し借りをする場合です。
- 知人にまとまった開業資金を貸す
- 親族にお金を貸すが、なあなあにせず返済させたい
「借用書」だけでは、相手が開き直って逃げた時に裁判が必要になりますが、公正証書にしておけば一発で給料等の差し押さえに動けます。
- ケースC:遺言書(公正証書遺言)
-
自分が亡くなった後の財産の分け方を決めておくケースです。
遺言書にはいくつか種類がありますが、自分で書く「自筆証書遺言」は、書き方のルールが厳しく、1文字の間違いで無効になってしまうリスクがあります。また、死後に親族間で「本当に本人が書いたのか?(ボケていたんじゃないか?)」と揉める原因にもなります。
公証人が作成する「公正証書遺言」なら、形式的な不備で無効になるリスクがありません。さらに、死後の面倒な家庭裁判所での手続き(検認)も不要になるため、残された家族への負担を一番減らせる方法です。 - ケースD:尊厳死宣言・任意後見契約
-
将来、自分が認知症になったり、病気で意思疎通ができなくなったりした時に備えるものです。
- 任意後見契約: 自分が元気なうちに、将来認知症になったら誰に財産管理を頼むかを決めておく
- 尊厳死宣言: 不治の病で回復の見込みがない場合、延命治療を拒否して自然な死を望む意思を公的に残しておく
- ケースE:ペット信託
-
現在、多くの家庭が犬、猫などペットを飼育されています。若い世代はもちろん、お年寄りもペットを家族として迎えるケースも多いです。ただ、お年寄りの場合、自分自身がペットの面倒を見れなくなった場合、残されたペットをどうしようか悩みが尽きないかもしれません。そんな場合ににはペット信託という方法があります。何かあった場合に、お知り合いの方などにペットの飼育をおまかせします。そしてこのお任せする契約を公正証書で対応すれば、受託者の飼育費用使い込み防止や、死後の確実な履行に非常に有効です。公証役場で「信託契約公正証書」を作成することで、法的な証明力が高まります。受託者が飼育費を適切に使わない場合などは、裁判を起こさなくても財産の差し押さえが可能になります。
ペット信託を公正証書で行えば、万が一、ご自身に何かあった場合も安心して、他社に飼育をお願いできるでしょう。
公正証書ができるまでの流れについて
実際に公正証書を作ろうと思った場合、いきなり公証役場に行ってもその日には作れません。事前に入念な準備と予約が必要です。一般的な流れを追ってみましょう。全体の期間としては、最初の相談から完成まで、スムーズにいけば2週間〜1ヶ月程度であることが多いです。
- ステップ1:当事者間で「合意」を作る
-
まず大前提として、お互いが内容に納得していることが必要です。公正証書は公証人が間に入って話し合いを仲裁してくれる場所ではありません。あくまで「2人が合意した内容を、法的に完璧な書類にする場所」です。
例えば離婚なら、「養育費は月4万円」という合意を事前に二人で決めておきます。 - ステップ2:公証役場へ相談・申込み(片方だけでもOK)
-
合意内容のメモ(離婚協議書の原案など)や、必要書類(戸籍謄本、実印、印鑑証明書、身分証など)を用意して、公証役場に連絡します。これは代表者1人で行うか、最近ではメールやFAX、郵送で対応してくれる役場も増えています。
- ステップ3:公証人による原案の作成・確認
-
公証人が提出されたメモを元に、法律のルールに則った「公正証書の原案」を作成してくれます。出来上がった原案がメールなどで送られてくるので、当事者双方が内容を確認し、「これで間違いありません」となったら、実際に公証役場へ行く日(予約日)を決めます。
- ステップ4:当日、当事者全員で公証役場へ行く
-
予約日に、原則として当事者2人揃って公証役場に足を運びます(どうしても行けない場合は、委任状を用意して代理人を立てることも可能ですが、手続きが少し複雑になります)。
公証人の部屋(応接室のような場所)に入り、公証人が書類を読み上げるのを聞きます。内容に間違いがなければ、その場で2人が署名・捺印をします。 - ステップ5:費用の支払い・書類の受け取り
-
その場で公証人手数料(現金払いが基本)を支払い、完成した公正証書を受け取ります。
- 原本: 公証役場に保管されます(紛失の心配なし)。
- 正本(せいほん): 主にお金をもらう側(債権者)が持ちます。将来、差し押さえをする時に必要となる重要な書類です。
- 謄本(とうほん): 主にお金を払う側(債務者)が控えとして持ちます。
公正証書にかかる費用はどれくらい?
公正証書の作成には、国が定めた「公証人手数料」がかかります。この手数料は、書類の枚数や「扱う金額(目的価額)」によって細かく決められており、全国どこの公証役場でも一律です。金額が大きくなればなるほど、手数料も高くなります。こちらの記載内容はあくまで参考です。実際の手数料金額については、公証役場で確認してください。
※当事務所に公正証書のサポートをご依頼頂く場合は、当事務所の報酬がこれらの公正証書手数料とは別に発生しますので、ご注意下さい。
※手数料の目安
| 支払う総額が100万円以下 | 7,000円 |
| 100万円超 ~ 200万円以下 | 8,500円 |
| 200万円超 ~ 500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円超 ~ 1,000万円以下 | 17,000円 |
| 1,000万円超 ~ 3,000万円以下 | 23,000円 |
※以降、金額に応じて細かく加算されます。
離婚の公正証書を作る場合、少し計算が特殊になります。「養育費」「慰謝料」「財産分与」はそれぞれ別のお金としてカウントされ、それぞれの金額に応じた手数料を合算します。また、養育費は「毎月の額 × 支払う年数(ただし最長10年分まで)」で計算されます。
【例】養育費が月5万円・10年間(総額600万円)+ 慰謝料200万円 の場合
養育費600万円の手数料 = 17,000円
慰謝料200万円の手数料 = 8,500円
これに基本の手数料や用紙代(数千円)が加算され、トータルで約3万〜4万円前後になるイメージです。この費用を「どちらが支払うか」についても法律の決まりはないため、事前に「折半する」「もらう側が全額出す」「払う側が全額出す」などを当事者間で決めておく必要があります。
公正証書 知っておくべき注意点とデメリット
公正証書にはメリットもありますが、デメリットもあります。
- ✕ 相手の協力(同意)がないと作れない
-
これが最大のハードルです。公正証書は片方の意見だけで強制的に作れるものではありません。相手が「公証役場なんて行かない」「そんな書類にサインしない」と拒否している場合は、どれだけこちらが作りたくても作成できません。その場合は、家庭裁判所の調停や裁判へ進むことになります。
- ✕ 法律に違反する内容は書けない
-
公証人は法律の番人です。そのため、いくら2人が合意していても、公序良俗(社会の一般的なモラル)に反する内容や、法律上無効な約束は書類に書いてもらえません。例えば、以下のような、行き過ぎたペナルティや違法な約束はカットされます。
(例)「浮気をしたら、一生子供に会わせない」
(例)「利息制限法を超える、年利50%の利子をつける」
- ✕ 手間と費用がかかる
-
前述の通り、事前の書類集め、公証人とのやり取り、平日の昼間に公証役場へ行く時間、そして数万円の手数料がかかります。「ちょっとした口約束」のために作るにはハードルが高いと言えます。
会社員の方などは、平日の昼間にお時間をつくるのも大変かと思います。公正証書作成にネックとなるかもしれません。当事務所でもサポート可能ですので、このようなお悩みをお持ちの方は、お気軽にご相談下さい。
まとめ
公正証書は、「将来の安心を数万円で買う、最強の保険」です。特に、離婚の養育費や、長期間にわたるお金の貸し借りなど、「もし途中で払ってもらえなくなったら、自分の生活が破綻してしまう」という重大な約束を交わすときには、絶対に作っておくべきです。
もし、「相手と話し合いはついたけれど、公証役場に出す原案をどう書けばいいか分からない」「平日に対応すのは難しい」という場合は、お気軽に当事務所にご相談下さい。原案作成や公証役場との調整を代行させて頂きます。スムーズに対応させて頂きますので、ぜひ当事務所のサービスをご利用下さい。
お問合せ
公正証書について、ご質問等ございましたら、お気軽に以下のフォームからご連絡をお願いします。
お電話、あるいは、Zoom、Google Meet、LINE等のオンラインツールでのお問い合わせも可能です。こちらをご覧ください。

